エレキギターのラッカー塗装

エレキギターのラッカー塗装について記述します。

以下に記した手順は、木目を見せるために水性ステインで木地着色する場合です。

 0.元の塗装を落とす
 1.木地仕上げ
 2.砥の粉で目止め
 3.水性ステインで着色
 4.木部プライマー塗布
 5.サンディングシーラー塗布
 6.サンディングシーラー研磨
 7.クリアー塗布
 8.水研ぎ
 9.コンパウンド研磨

塗り潰しの場合は「3.水性ステインで着色」が「6.サンディングシーラー研磨」の後になり、着色に使用するのも水性ステインではなく、色付きのラッカー塗料で行います。

※この記事は、あくまでも私が行っている方法についてであって、他にもいろんな方法や手段や手順があり、それらを否定するものではありません。

0.元の塗装を落とす

元の塗装を落とす

この作業は既存のギターをリフィニッシュする場合に必要となりますが、新規にギターを作る場合には必要ありません。

塗装を落とす方法としては、ヒートガンやアイロンなどで塗装を温めて軟らかくしてスクレイパーで剥がしたり、塗装剥離剤などを塗って溶かしたり、サンドペーパーで削ったりと、いくつかの方法がありますが、私は失敗のリスクが少ない代わりに滅茶苦茶に大変なサンドペーパーでの研磨で行ってます。

使用しているペーパーは空研ぎ用の80番で、それをサンディング用の硬いスポンジに巻き付けて、とにかく力を込めて研磨します。

ラッカーの場合は研磨の熱で塗料が溶けてペーパーが目詰まりするので、力は込めますが、できるだけゆっくりと擦ります。

削った塗料の粉が大量に出るので、マスク装着は必須です。

基本的に木地が出るまで研磨するのですが、削り粉に木材が混ざってきたら塗料が全部落ちたと判断しています。

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  • 1.木地仕上げ

    木地仕上げ

    すべて空研ぎ用のペーパーで、80番、120番、240番、320番、400番と研磨して、木地の細かい傷を落としていきます。

    この時、研磨する方向は木目と並行に、ギターの場合は大抵がヘッド〜ボディエンドと並行に擦ります。

    もちろん電動サンダーやダブルアクションサンダーなどを使用して楽をするのもありです。

    この作業も削った木材の粉が大量に出るので、マスク装着は必須です。

    この作業で手を抜くと、後の着色やサンディングシーラー塗布で苦労するので、シッカリと仕上げた方がいいです。

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  • 2.砥の粉で目止め

    砥の粉で目止め

    アッシュやマホガニーなどの導管が太くて多い材の場合は、塗料が導管に吸い込まれるのを防ぐため、事前に砥の粉やウッドフィラーなどによる目止め作業が必要となります。

    メイプルやアルダーなどの導管が小さい材には必要ありません。

    私は砥の粉を使用しているのですが、水で溶いて半練り状にして、砥の粉がシッカリと入り込むように導管の向きと並行に、ヘラで押さえ付けながら伸ばすように塗っていきます。

    塗装するカラーに合わせて色が付いている砥の粉を使ってもいいですし、溶く時にステインを混ぜて目的の色に着色して塗るのもありです。

    砥の粉が半乾きになったら余計な砥の粉を拭き取るのが一般的なようですが、私は完全に乾燥してから400番のペーパーで軽く研磨しています。

    乾いた砥の粉は細かい粉なので、念のためにマスクを着用した方がいいです。

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  • 3.水性ステインで着色

    水性ステインで着色

    着色する前に、指版などの塗料が付いてはいけない部分をマスキングします。

    私はバインディングもマスキングしますが、取りあえず着色した後でバインディングに乗った塗料をスクレイパーなどで落とす方法もあります。

    砥の粉で目止めした部分にマスキングテープを貼ったり、刷毛でステインを塗ったりすると、せっかく導管に入った砥の粉が取れてしまう場合があるので要注意です。

    メイプルのフレイムやキルトなどの場合は、タンポなどで濃い目のステインを擦り込むように塗り、乾燥後に研磨する事で杢の部分だけ薄く色が残り、それを何回か繰り返す事で杢を際立たせる手法がメジャーです。

    サンバーストなどのグラデーションもタンポで塗って研磨するを繰り返す事で可能ですが、スプレーガンやエアブラシを使用した方が簡単で綺麗です。

    画像の左側はエアブラシでサンバーストの着色中で、右側はバインディングなどのマスキングを剥がしたところです。

    木地仕上げが中途半端で傷が残っていると、そこだけ色が濃くなって目立つので、木地仕上げで手を抜かないようにした方がいいです。

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  • 4.木部プライマー塗布

    木部プライマー塗布

    プライマーというのは下塗り剤のひとつで、上塗り剤が木部に吸い込まれるのを抑え、同時に木地と上塗り剤を接着させる役割があります。

    プライマーは塗装する材が金属ならメタルプライマー、車のバンパーならバンパープライマーと、いくつかの種類がありますが、ギターの場合は基本的に木材なので、木部プライマーを使用します。

    指版などの塗装しない部分はマスキングしたままですが、バインディングはボディやネックと一緒にクリアー塗装するのでマスキングは剥がします。

    バインディングなどに乗ったステインを落として着色が完了したら、シッカリと濡れるように、でも垂れないように、2〜3回に別けて吹きます。

    プライマーが乾燥すると砥の粉や着色したステインがコーティングされたようになり、微妙に艶が出て、触れても砥の粉や色が落ちなくなります。

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  • 5.サンディングシーラー塗布

    サンディングシーラー塗布

    木部プライマーを吹いた後、丸1日くらい乾燥させたらサンディングシーラーを塗布します。

    サンディングシーラーとは、鏡面仕上げする場合に表面の凹凸を無くすために使用するもので、厚めに塗布してから研磨(サンディング)して平面を出すのが目的です。

    私は渡辺商店で販売している、玄々化学のラッカーサンジング「LS-10」をラッカーシンナー「TL-11」で希釈してスプレー缶に詰めた商品と、和信ペイントのラッカーサンディングシーラーを併用しています。

    玄々化学のラッカーサンジングを8回くらい吹いて、それでもマホガニーなどの導管が大きい材では平面が出ない部分があるので、そこに和信ペイントのラッカーサンディングシーラーを補助的に筆塗りしています。

    サンディングシーラー塗布後、私の場合は最低でも1週間(長ければ1ヶ月間)は乾燥させます。

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  • 6.サンディングシーラー研磨

    サンディングシーラー研磨

    サンディングシーラーの研磨は、1回吹くごとに軽く研磨するのが一般的なようですが、私は途中で研磨せずに重ねて吹いて、乾燥後に一気に研磨するスタイルです。

    研磨に使用しているのは空研ぎペーパーの400番で、ボディトップなどの広い面では歪みのない平面を出すために、300mm X 200mm X 18mmくらいの大きさの集成材にペーパーを貼り付けて、ボディサイドやネックなどの曲面はペーパーを研磨用スポンジに巻き付けて、それぞれサンディングしています。

    難しいのは研磨の加減で、可能な限り薄くしたいのですが、それを狙って研磨し過ぎるとサンディングシーラーを通り越して木地まで達して着色が落ちてしまいます。

    そのリスクを避けるためには、1回吹くごとに研磨する方がいいかもしれません。

    この作業も削ったサンディングシーラーの粉が大量に出るので、マスク装着は必須です。

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  • 7.クリアー塗布

    クリアー塗布

    いわゆる「トップコート」に相当するもので、光沢や耐久性を向上させる役割があります。

    私が使用しているのは、サンディングシーラーと同じく渡辺商店で販売している、玄々化学のラッカークリヤー「LC-22」をラッカーシンナー「TL-11」で希釈してスプレー缶に詰めた商品です。

    ホームセンターなどで販売している「ラッカー」表示があるスプレー缶は、塗装から半年くらい経つとなぜかバインディング部分にシワができたり、真夏の屋内などの暑い場所に置いておくとケースの内装材が貼り付いたりするので、私の経験上あまりお薦めできません。

    シッカリと濡れるように、でも垂れないように、ムラにならないように吹いて、3時間以上乾燥させたら再度吹いて、それを数日に渡って繰り返して、トータルで10回くらい吹きます。

    クリアーもサンディングシーラーと同様に、1回吹くごとに軽く研磨するのが一般的ですが、私は研磨せずに塗り重ねて、十分に乾燥させてから水研ぎを行う手順です。

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  • 8.水研ぎ

    水研ぎ

    クリアーの塗布を行った後に最低でも1ヶ月間は乾燥させてから、鏡面仕上げのための第一歩となる水研ぎを行います。

    私は耐水ペーパーの800番から始めて、1000番、1200番、1500番と進めていくのですが、最初の800番がとにかく大変です。

    というのも、乾燥したクリアーはザラザラのサメ肌状になっており、それを削り落として平面を出さなければならないのですが、玄々化学のラッカークリアーが想像以上に硬く、本来ならば目詰まりしにくいはずの耐水ペーパーがすぐに使い物にならなくなるからです。

    なのでサンディングブロックで広い範囲を一気に研磨しようとしても太刀打ちできないため、50mm四方くらいにカットしたペーパーを指で押さえ付けながら狭い範囲をチマチマと研磨していきます。

    800番が終われば、その後はかなり楽に進められますが、800番が縦方向だったら1000番は横方向という具合に、番目が上がったら研磨する方向を垂直に変えて、前の番目の擦り傷が消えるように研いでいくのがコツです。

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  • 9.コンパウンド研磨

    コンパウンド研磨

    水研ぎでスベスベになりましたが、まだ曇った感じで鏡面とは言い難いので、コンパウンドで研磨して鏡面に仕上げます。

    私が使用しているのは車のボディ塗装用で99工房の、半練り状の細目、液状でキズ消し用の3000番、仕上げ用の7500番、超鏡面用の9800番です。

    これらを車のボディなどを磨くために使用する研磨用のスポンジに付けて研磨するのですが、番目ごとに別々のスポンジを使用する必要があります。

    また、番目を変える前にギターに付着して残ってるコンパウンドを綺麗に拭き取らなければなりません。

    なぜかというと、番目を上げて研磨した際に低い番目のコンパウンドが残っていると、高い番目で磨いた効果が出ないからです。

    余談ですが、なぜか半練り状の細目のコンパウンドは臭いがかなりきつく、屋内で使用する時には換気が必須で、さらに使用後のスポンジも強烈な臭いを放つので、数枚のビニール袋などで重ねて厳重に包まないと、部屋に臭いが充満して大変な事になります。

    最終的な仕上げとして電動ポリッシャーなどでバフ掛けを行うと、手作業では困難なピッカピカな眩しい艶を出せるのですが、私は柔らかく暖かみのある手作業の艶で十分に満足なので、バフ掛けはやってません。

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