2021年5月2日 (日)

BFV-700

ずーっと前からフライングVは欲しいと思っていたのですが、なかなか入手する機会がありませんでした。

自作しちゃおうかと思った事もあるのですが、大きさやVの角度などが分からないために断念しました。

そんなある日、ヤフオクでバッカスのネック折れで電装品が無い個体を見つけたので調べてみたところ、今は生産していないBFV-700(定価¥73,500)というモデルではないかと推測したため、約1万円で落札しました。

ヘッド折れ

手元に届いた現物を確認したところ、各所の作りが綺麗でしっかりしており、塗装もポリだとは思いますが、安物によくある極厚ではなくラッカーのように薄いため、間違いなく前出のモデルだろうと確信しました。

ペグやナット、ブリッジやテールピースなどのハードウエアは付属しており、幸いにも折れた部分は綺麗で面積も広かったため、さっそくタイトボンドで接着して、乾燥後にダンカンのSH-5を仮載せして10-46の弦を張ってみました。

取りあえずヘッドの接合は問題無さそうで、本来ならカリカリに硬い高域が特徴のSH-5であっても、フライングV特有の角が取れて軽くて豊かな中域の鳴りが緩和してくれて、それらしい音を出してくれました。

リバースヘッド

という訳で、これを大改造しようと思います。

なぜリペアだけして弾かずに大改造するのかは、後日に改めて書こうと思います。

まずはヘッドを自作ギターと同じ片側6連のリバースにします。

成形するために貼り付けたのは、自作ギターにも使用しているという理由から何も考えずに山桜材を使ったのですが、後になって余っているマホガニー材を使えばよかったと後悔しました。

まぁ、音的にはほとんど影響ないでしょうし、塗装で誤魔化せば分からなくなると思うので気持ちを切り替えましょう。

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  • 2021年5月9日 (日)

    ヘッド継ぎ

    ネック折れを接着した部分への補強は必要ないと思いますが、接続箇所を綺麗に見せるため、また多少なりとも補強を兼ねてくれると期待して、とある工房のネック折れ修理の動画を参考にさせてもらい、ヘッド裏からネックのローポジションまでを約4mmの深さで削り、そこにマホガニーの板を貼り付けてみようと思いました。

    で、ヘッドからネックの裏を削った際に判明したのが、私の嫌いなスカーフジョイントではない事が分かったと同時に、画像では分かりづらいのですが、実はヘッドの途中でスカーフジョイントのように継ぎはぎしていた事実です。

    ヘッド折れ補強

    そのアイディアにはちょっと感心しました。

    厚さ4mmのマホガニー材の板を作り、それを濡らしてヘッドからネックの裏の曲線に合うように湾曲させてから貼り合わせました。

    ボンドが乾燥した後でクランプを外してみたら、微妙に板の方向が曲がっていたのは、素人の工作レベルという事で笑って誤魔化しましょう。

    その後、貼り付けた板のはみ出た部分をナイフやヤスリなどで整形すれば終了です。

    ヘッド折れ補強

    これでネックが折れた部分は見えなくなったのですが、まるで逆を向いたスカーフジョイントのような継ぎ目は、同じ材ではあっても別々の板を貼り合わせる以上は如何ともし難く、ここも塗装で誤魔化そうと思っています。

    前出の修理動画では貼り合わせた部分すら違和感なく仕上がっていたので、その辺はさすがにプロだと感心せずにはいられません。

    まぁ、素人が見よう見まねで簡単に同じレベルの事ができちゃったら、プロとしては堪らないでしょうし。

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  • 2021年6月6日 (日)

    キャビティ埋め

    そもそも私がフライングVをカッコいいと思って欲しくなった最初のきっかけは、KISSが1978年に来日した際にエースがステージでGRECO AK-1400を弾いた写真を見た事です。

    当初はグレコのオリジナルモデルだと思っていたのですが、後になってジャズギタリストのアルバート・キングのモデルのコピーだと知りました(だからAK-1400なんですね)。

    となると、フライングVを改造するにあたって、それを模そうと思うのは当然でしょう。

    という訳でバインディングを入れたいのですが、このギターのボディのエッジは半径9mmくらいで大きく丸く落とされているので、このままではバインディングチャンネルが掘れません。

    ネックバインディング

    さらにスルーネックのように見せるためにはどうしたらいいかを思案した結果、ボディトップを約10mmの深さで削り取り、そこにスルーネックのように数種類の材を貼り合わせたセンター部分と、エッジの付いたマホガニー材をウイング部分に貼り付けるという無駄で無謀で無茶な苦肉の策を考えました。

    さらに、どうせならキャビティもいったん全部埋めて新たに掘り直せば、コントロールレイアウトも思い通りになる事に気づきました。

    自分で考えておきながら泣きたくなるくらいにスゲー面倒臭いです。

    サイドポジションマーク

    という訳で、まずはPUキャビティとコントロールキャビティをひと回り大きく直線でザグり直し、マホガニーの端材を現物合わせで削って埋めました。

    完全に埋めておらず、少し凹んでいるのは、どうせ後でトップ全体を10mmくらい削るからです。

    次にネックにバインディングを入れます。

    まずはフレットを抜いてチャンネルを掘るのですが、ボディが接合された状態では自作トリマースタンドが届かない場所もあり、作業にちょっと工夫が必要でしたが、どうにか上手く掘れました。 バインディングを貼ったらはみ出た部分を削って、サイドのポジションマークを入れて終了です。

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  • 2021年7月10日 (土)

    スルー板

    偽物スルーネックの部分を作るため、19mm幅のハードメイプルを2本、14mm幅のハードメイプルを1本、7mm幅のマホガニーを2本、そして3mm幅のエボニーを2本切り出して、それらを貼り付けました。

    簡単に「貼り付けました」と言ってますが、ほんの僅かな隙間すら無いように本当に真っ直ぐな長い直線を出すのは素人には至難の業です。

    まぁ何とか上手く誤魔化しながらやってますが。

    で、いよいよボディトップを大胆に加工していくのですが、まずは偽物のスルーネックの7プライの板を貼るためにセンター部分を電動トリマーで削ります。

    トップセンターザグり

    この作業もネックが接合されているため、その周囲は専用のガイドを作らなければならず、ちょっと面倒臭いです。

    さらにこの時に配線を通す穴もザグっておきます。

    コントロールキャビティ辺りからテールピースの後方を通って左側のウイングの内側に伸びている穴はアウトプット用の線を通すためです。

    スルー板貼り付け

    ずいぶん昔にどこかのメーカーのV型のアウトプットジャックがこの位置にあるのを見た時に、目から鱗的に物凄く感心した事があって、それ以来V型は肩から吊るした時の見た目的にも使い勝手的にも、この位置にアウトプットジャックがあるのがベストだと思っていたからです。

    でもこの配線は貼り合わせボディじゃないと無理ですよね、きっと。

    そして削ったセンター部分に偽物スルーネックの板を貼り付けます。

    やはりネックがセットされている状態での作業は少し厄介で、こういった手間を考えると、既製品を改造するよりも新たに作った方が単純で簡単かもしれないと思ってしまいます。

    まぁ、場合によりけりですけどね。

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  • 2021年7月31日 (土)

    ウイング削り

    偽物スルーネックの板を貼り付けたら、今度は電動トリマーと即席で作った治具のような物を駆使して、両側のウイングのトップを10mmの深さまで削ります。

    コントロールキャビティが綺麗に埋められている事と、予め加工しておいた配線を通す穴のレイアウトが確認できます。

    そして、削った部分をペーパーで研磨して綺麗に均したら、大雑把にV型に合わせて三角形にカットした10mm厚のマホガニー材を貼り付けます。

    ウイング貼り

    本音を言うなら58年のモデルのように、木目をV型に合わせるように斜めにマホガニー材を貼りたかったのですが、残念ながらマホガニー材のサイズが微妙に小さくて断念しました。

    このマホガニー材は、ギター作製をしている人達なら誰もが利用しているアイモクからサイズをオーダーして購入したのですが、その時に厚さは指定したのですが、長さ方向はレスポール用のままだったためです。

    縦方向にあと約20mm長いサイズで注文すればよかったのですが、いまさら悔やんでも仕方がありません。

    ヘッドトップ

    疑似スルーネックを強調するために欠かせないのがヘッドの表面です。

    ここにもハードメイプルとマホガニーを交互に貼った板を貼るのですが、ボディに貼ったのと同じ物だと幅が足りず、エボニーや外側のマホガニーまで必要となります。

    なのでヘッドはボディとは別に作った5プライの板を貼りました。

    1970年代の終わりくらいに発売されたヤマハのSC-1200のヘッドに超弩級に似てますが、あちらはノンリバ、こっちはリバースなので問題無いでしょう。

    これで表側から見たら絶対にスルーネックだと思われるのは間違いありませんね。

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  • 2021年8月13日 (金)

    ボディトップ成形

    トップに貼った材のはみ出た部分を元のボディに合わせて電動トリマーで綺麗に成形し、PUキャビティやコントールキャビティをザグり、ブリッジやテールピースの穴を開けました。

    続いてボディのトップ以外の部分の塗装を剥がします。というよりも削り落とすと言った方が正確でしょう。

    当初は塗装が薄いので、もしかしたらラッカーかもしれないと思っていたのですが、80番の空砥ぎサンドペーパーで研磨したところ、やはりという感じでポリ独特の匂いと削りカスが出てきました。

    塗装剥がし

    しかもバックにはご丁寧に突板まで貼ってあって、安物ギターの雰囲気を思い切り感じさせてくれます。

    激安ガラクタギターの場合は正体不明な材を多数貼り合わせて継ぎ接ぎになっているのを誤魔化すために突板を貼るのは常套手段ですが、これはちゃんとしたマホガニー材だし多ピースでもないので、なんで突板を貼ってあるのか疑問です。

    面倒臭いので、突板は残したままにします。

    ボディバインディング

    ボディにバインディングを入れます。

    ほとんど直線で成り立っているのでチャンネルを掘る作業そのもの簡単なのですが、僅かな歪みでも誤魔化しが効かないので、むしろ普段よりも緊張が必要でした。

    相変わらずの瞬間接着剤でバインディングを貼ったのですが、やはりバインディングがあると全体が引き締まるような気がします。

    その後、ヘッドにもバインディングを入れました。

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  • 2021年9月4日 (土)

    パーツ仮置

    試しにパーツを仮置きしてみたのですが、操作性ばかりを考えていたら、トグルスイッチとテールピースが近すぎて違和感ありまくりになってしまいました。

    いやほら、ボディ裏からコントロールの穴を開ける時って表側のパーツの位置って分からないから仕方がないじゃんって感じで自分で自分に言い訳してる私です。

    まぁ、演奏やスイッチングには支障が無いし、むしろブリッジに近い方が操作しやすいし、これもオリジナリティのひとつだと思って気にしない事にしましょう。

    ペグ仮止め

    で、ヘッドにペグを取り付ける穴を開けたのですが、ほんの数ミリだけズレてしまった穴がありましたが、パッと見は分からないし機能に問題は無いので、こちらも気にしません。

    次にフレットを打ち込みます。

    元々は幅が広くて低いタイプのジャンボがだったようですが、私はミディアムジャンボが好きなので、相変わらずの三晃製のSBB-202という型番の物を愛用しています。

    ところがこの型番はメーカーサイトに掲載されていないのです。

    もしかして偽物を掴まされているのかなどと疑ったりもしましたが、サイトにも「代表的な形状」とか「主な機種」などと案内されているので、マイナーな型なんだろうと思っています。

    フレット打込み

    結構な力を込めて打ち込んでいるので大きな衝撃音が家中に響き渡り、隣の部屋でオンラインゲームをしていた息子から「うるさい」とクレームが来たのですが、それでも指版との間にコピー用紙が入り込む隙間ができてしまいます。

    単純に私が下手クソなだけか、それとももっと力を入れないとダメなのか分かりませんが、どうせ工作の延長のようなもんなので、紙が入る隙間くらいなら気にしません。

    でももしコツがあるのなら教えて欲しいです。

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  • 2021年9月12日 (日)

    フレット擦り合わせ

    指版をマスキングしてフレットの擦り合わせを行います。

    フレットに油性マジックで色を付け、全部のフレットの頂点部分の色が落ちたら擦り合わせができた目印となります。

    早速ペグなどのパーツを仮で載せて弦を張り、アンプに繋がずに全弦の全ポジションで音を出して詰まりやバズりを確認しましたが問題ありません。

    さらにベンドをして同じように音の確認をしましたが、こちらも大丈夫です。

    仮音出し

    なので指版のマスキングを剥がすよりも先にリアだけ Gibson 57 Classic を仮載せしてアンプから音を出してみたのですが、マホガニーボディの典型的なフライングVとPAF系のPUが相まった「カコーン」という音が気持ち良くて上機嫌になった私です。

    ソリッドのエレギはボディ形状が音に与える影響が少ないと思っている人は、絶対にV型を弾いてみるべきだと思います。

    以前にも書いたように、このギターのアウトプットジャックは左側ウイングのエンド方面に位置するため、プラグとシールドがV型に沿って斜めに出るようにストラトの舟型を利用します。

    アウトプットジャック

    ちょちょいと楕円形にザグればいいものを、U字型で斜めに沈み込んでいる部分は、その形状に合わせて傾斜を付けて彫刻刀でザグろうと軽く考えてしまったのが大間違いで、その彫刻刀がまったく切れず、結局はヤスリでガリガリと根性で削る羽目になりました。

    まぁ、3人の子供たちが小学生の時にお下がりで順番に酷使した彫刻刀なので切れなくて当然なのですが、やはり工作を楽しむためには砥ぎも習得する必要があるのかもしれませんね。

    で、実は舟型が入るザグりは単純な楕円ではダメで、奥にジャックのプラス端子が入り込むスペースを確保しなければならない事を学びました。

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  • 2021年10月9日 (土)

    砥の粉で目止め

    塗装工程に入ります。

    塗装と言っても、このギターに関しては、トップは偽のスルーネックの飾りを強調するために着色は一切行いません。

    ただしバックはネック折れの補修痕を誤魔化すために、チェスナットで濃い目のバーストを吹く予定です。

    まずはマホガニー材の目止めを行うのですが、和信の水性ステインのチェスナットで着色した砥の粉を使用するため、色が着いてはいけないメイプル材やバインディングなどの部分は予めマスキングしておきます。

    ボディバック塗装

    半練り状の砥の粉がマホガニー材の導管にシッカリと入り込むようにヘラで押し込むように塗り込んで乾燥させます。

    この時点では乾いたチョコレートのような色をしてますが、ペーパーで軽く研磨して余分な砥の粉を落とすと元の木材の色に戻ります。

    ここでボディトップをマスキングしてボディバックとネック裏にエアブラシでバースト処理します。

    プライマー

    ネック裏は修正痕のつぎはぎがちゃんと隠れるようにシッカリと着色しましたが、ボディバックは突板が貼ってあって興醒めなので思い切り適当です。

    書き忘れてましたが、塗装に入る前にコントロールキャビティの蓋をマホガニー材を板状に削って作ってあります。

    着色後に木部プライマーを吹きます。

    薄い色だったマホガニー部分が材特有の落ち着いたアンティーク調の濃い目の渋い色となり、相対的に偽のスルーネック部分が目立って一層カッコよくなりました。

    この後はサンディングシーラーとクリア塗装なので、詳細は割愛します。

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  • 2021年12月25日 (土)

    フライングV

    という訳で、クリア塗装を行ってから約2ヶ月間の乾燥を経たので研磨作業に入ります。

    何度も言ってますが、クリアの研磨はいちばんイヤで嫌いな工程です。

    しかし今回は着色の時にも触れた通り、ボディバックに突板が貼ってあって興醒めしたので、そのボディバックとサイドは研磨をせずにエンボス加工のような鮫肌を残す仕様とするため、いつもよりも全然気が楽です。

    フライングV

    毎回おなじみの耐水ペーパー800番、1000番、1200番、1500番の順で研磨して艶が無くなった後、車用のコンパウンド細目、3000番、7500番、9800番の順に磨いて艶が出たら終了です。

    研磨後にPUキャビティとコントロールキャビティ内に導電塗料を塗って、それが乾燥後にパーツを取 り付けて配線して、弦を張って弦高やらチューニングやらを調整したら完成です。

    今回のPUも私のお気に入りの1980年製のディマジオPAFで、ポットはCTS、トグルスイッチとアウトプットジャックはスイッチクラフト、配線はベルデン、ペグはゴトーです。

    フライングV

    ブリッジとテールピースは、このギターを落札した時に付属してきた物を使用したのですが、テールピースは重さから判断してアルミ製だと思われます。

    音は製作途中にPUを仮載せした時よりも少し落ち着いた感じで、それは塗装による結果ですが、ローパワーでレンジが広いPUと、マホガニーボディでV型特有の形状から生み出されるハイミッドが見事にマッチして、全域で気持ちよく抜ける音は弾いていて満足感しかありません。

    このギターは元があるので自作ではなく改造という部類になりますが、 自作シリーズと同じリバース6連のヘッドを採用したので、自作と同様に名前を付けました。

    東京オリンピックを観ていて、漢字ひと文字で読みが3音の植物名で、こんな字があるんだーという単純な感心からの採用以外に他意はまったくありません。

    取りあえず、V型なので安直にマイケル・シェンカー辺りを弾いてみましたが、アルバート・キングのモデルに似せた渋い見た目なので似合わないかもしれませんね。

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