2020年10月13日 (火)

LC-600D

どうやら私はカモやガンの刷り込みの要素を少なからず持っているようで、そのジャンルで一番最初に興味持った対象をいつまでも引きずる傾向があるようです。

そのひとつが、私がエレギを弾きたいと思うに至った最大の衝撃と影響を与えられた「KISS」で、結果として2人のギタリストと同じギターが欲しいと思うのは自然な事でしょう。

取りあえずポールのシグネチャーであるPS10は本物を手に入れたのですが、エースのシグネチャーは高額でなかなか手が出せません。

なのでコピー物を探していたのですが、やはり3PUは人気があって安価での入手は困難なため、ノーマルを3PUに改造する事も含めて探していました。

とは言いつつも、やはり可能な限りいい物を手に入れたいと思うのは当然の事で、できればエボニー指板は譲りたくないと思っていました。

そんな中で目に留まったのがこの「Aria Pro II LC-600D」だったのです。

縞黒檀指板

1980年、それまでギブソンなどのコピーモデルを製造販売していたAria Pro IIの販売元である荒井貿易がギブソンの正規代理店に内定し、同時にAria Pro IIとしてはオリジナルモデルの製造販売へシフトしたため、コピーモデルの在庫を素早く一掃するために、当時大人気だったDiMarzioのPUへ換装して販売したシリーズのひとつです。

型番の最後の「D」がその表れですが、カスタムタイプのブラックパーツにアイボリーコイルを載せた無理やり感が半端無いです。

DiMarzio PAF

当時の定価が6万円と、決して上位機種とはいえない価格設定でありながら、ボディトップは3Pメイプル単板、ボディバックはパンケーキで多ピースではあるものの単板であり、ネックは70年代のギブソンを踏襲した3Pメイプル、ヘッドにはダイヤモンドインレイ、そして指板は縞黒檀ではあるもののエボニーというハイスペックは嬉しい限りです。

カスタムタイプでありながらハードウェアがクロームなのは、販売価格を下げるための努力なのかもしれません。

1980年ということで角足を期待したDiMarzio PAFですが、残念ながら三角足でした。が、角足と同様にベースプレートには型番が刻印されていないため、実質的には角足と同じ物のようです。

ダイヤモンドインレイ

外観や状態は小さな打痕と目立たない擦り傷が少しあるだけで、トグルスイッチがどのポジションでも完全に絶縁状態で音がまったく出ない事を除けば、約40年前の物としては非常に綺麗な部類です。

相変わらずのヤフオクで送料込みで約4万円で落札したのですが、前述のスペックとコンディションに加えて、当時物のDiMarzio PAFが搭載されていたならば、非常に安い買い物と言えるでしょう。

取りあえずトグルスイッチを家にストックしてあったスイッチクラフト製に交換して、倍音が少なくて金属的な音で使う当ての無いイシバシ楽器オリジナル弦を張って音を出してみたのですが、とにかく素早い立ち上がりと前に出る高域が相まって、リアはパッキパキでカリンカリン、フロントはコンコンでパカーンと、近年製のモコモコなレスポールよりも断然レスポールっぽい音です。

同じPUなのにリアとフロントのキャラクターが全然違うのが不思議なのですが、ボリュームをほんの少し絞っただけでモコモコに籠もるので、もしかしたらポットがダメになってる可能性があります。

しばらく弾いて楽しんだら、全部のパーツを外してボディ全体をクリーニングして、PU以外のアッセンブリーを総交換して、クロームパーツをゴールドに、ブラックパーツをアイボリーに交換していこうと思います。

もちろん最終的にはセンターPUを搭載してエース・フレーリーモデルを目指す予定です。

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  • 2020年10月21日 (水)

    抜け殻ボディ

    という訳で、しばらく弾いて楽しんだ後で、パーツを全部外して本体だけの状態にしました。

    どうしようか悩んだのですが、今回は交換できるパーツは全部交換する事にしたので、ブリッジのスタッドピンもテールピースのアンカーも抜きました。

    ナットとフレットは外す必要が無いのでそのままですが、それ以外で残ってるのは弦アースの線だけです。

    これでボディとネックが磨きやすくなったので、隅々まで綺麗にしていきます。

    こうして外したパーツを改めて見てみると、意外と山盛りなので驚いてます。

    ってか、トグルスイッチのプレートを両面テープでボディに貼り付けるのはやめて欲しいです。交換したり外したりする事を考えてないんだろうか??

    で、このギターの配線はちょっと変わってて、リアPUから延びてるシールド線がリアのトーンに繋がっていたので、頭の中に「???」が浮かび上がって何度も首を傾げてしまいました。

    パーツ

    よく見たら、トーンポットの2番端子に着地したホットはリード線でボリュームへ繋がっており、当たり前ですが一応は回路としては成立していました。

    厳密に言うと、トーンに繋がるタイミングがボリュームを通る前になるので、その辺の違いが音に表れるかもしれませんが、いずれにしろ何でこんなややこしい事をしたのかは分かりません。

    ボディやネックと同様にフレットも全体的に綺麗で、部分的な凹みも無く、弦高をそこそこ低くしてもビビるポジションが無くて非常に弾きやすい個体です。

    ネジ留めネック

    が、なぜだかは知る由もありませんが、22フレットだけは色が指板と同化するくらいに異常に錆びていて、最初に見た時は22フレットだけ抜かれてるのかと思ったくらいです。

    なのでボディの清掃のついでにフレットも磨かなければならないのですが、金属磨きのコンパウンドが指板に付かないようにマスキングする必要があるため、マジで物凄く面倒臭くて嫌なのですが仕方がありませんね。

    余談ですが、私の持ってる78年製のEG1000もそうなのですが、この時代の国産コピーモデルのセットネックは強度確保のためか、フロントPUキャビティ内の見えない部分で大胆にネジやダボでテノンを留めてる事が多いような気がします。

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  • 2020年10月24日 (土)

    ボディバック

    と言う訳で、ヘッドの先端からボディエンドの隅々までポリッシュで磨きました。

    ボディバックは単板とはいえ、かなりの多ピースとなっており、これがパンケーキとなると、もしかしたらマホガニーだけで10ピース以上を貼り合わせていても不思議ではありません。

    私は同じ状態の材ならワンピースも2ピースも音は変わらないと思っているのですが、さすがにここまでの多ピースとなると、少しばかり精神的に良くありません。

    まぁ、価格を低く抑えるためには仕方がないのですが、パッと見た目では分からないくらいに綺麗に貼ってあるのが幸いです。

    フレット磨き

    錆びて真っ黒になった22フレットを綺麗にするついでに、全フレットを磨くために指板にマスキングをしました。

    相変わらず面倒臭い作業ですが、ここを適当に行うと金属磨きの液体コンパウンドが指板の目に入り込んでみっともなくなるので手を抜けません。

    余談ですが、作業している部屋には本棚があって、この「The Five Star Stories」の単行本は厚みも大きさも丁度いいため、ネックやヘッドに角度があるギターを寝かせる時にはいつも下敷きに利用しています。

    作者もギター好きなので怒らないでしょう。たぶん。

    フレット錆び落とし

    他のフレットはちょいと磨いただけで何の問題も無かったのですが、当初の目的だった22フレットだけは磨いても磨いても磨いても全然まったく錆が落ちなくて本当に苦労しましたが、どうにかそれなりに綺麗にはなりました。

    なので次からはパーツを取り付けていくのですが、そうするとせっかくボディやネックをピカピカに磨いたのに、あちこちを手で持って手油やら指紋やらをベタベタと付けてしまう事になるんですよね。

    柔らかい布製の手袋をすれば防げるのですが、商品として売るわけじゃないし、完成後に普通に弾けば汚れるのは当たり前なので、その辺は無視します。

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  • 2020年10月25日 (日)

    ピカピカになった本体にパーツを取り付けていきます。

    LC-600D

    実は手元に他のギターを作るために購入してあったパーツがいくつかあり、そのギターはぶっちゃけ作るかどうかも怪しくなってきたので、そのパーツを流用する事にしました。

    そのパーツとは、ペグとブリッジとテールピースとトグルスイッチとアウトプットジャックです。

    その他のパーツは相変わらず早くて安くて便利なサウンドハウスにて購入します。

    余談ですが、そのサウンドハウスでは対象の商品を購入すると、価格によってサービスポイントが付与されるのですが、それの有効期間は1ヶ月と非常に短期間なので、上手くサービスポイントを利用しようとすると毎月買い物をしなければなりません。

    弦やピックなどの消耗品を買う手もありますが、1度に¥2,000以上注文しないと送料が無料にならないため、無駄に金がかかって本末転倒になりかねません。

    そこで今回、ポイントの大きな商品を先に購入して、それで得たポイントを利用して残りの商品を安く手に入れるという、超絶セコい時間差買い物を実行してみました。

    スタッドピンのネジ込み

    もちろん両方とも送料が無料になるように、それぞれの合計金額が¥2,000を超えるように振り分けてあります。

    ところが1回目の買い物をした後、ポイントがなかなか「処理中」から「獲得」に変わらず、2回目の買い物をしたくてもポイントが使えない状態が続きました。

    そこで調べてみると、ポイントが付与されて使用できるようになるのは出荷日から14日後との記述を見つけたのです。

    なんてこったい。

    とは言え、さすがサウンドハウス、注文したのが前日の夜遅くだったにもかかわらず、翌日には届くという速攻出荷だし、PayPay払い対応も便利です。

    と言う訳で、2回目は14日後以降に注文するとして、それまでは手元にあるパーツと1回目で入手したパーツを少しづつ組み込んでいきます。

    ブリッジとテールピース

    いつも厄介なのはブリッジのスタッドピンのネジ込みなのですが、今回は日本製のギターでGOTOHのブリッジを載せるため、ホームセンターでミリ規格の蝶ボルトを買ってきて、エレベーターと一緒に締め込んでラジオペンチで回してネジ込んだので楽にできました。

    予想外に大変だったのがテールピースのアンカーの打ち込みです。

    こちらもGOTOH製でミリ規格なので穴の大きさは合っているのですが、叩いても叩いても叩いても本当に少しづつしか入っていかないのです。

    家の中で作業したのですが、間違いなく家の外にまで響くような大きな音が出ていたので、かなり近所迷惑だったと思いますが、どうにかキッチリと埋め込む事ができました。

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  • 2020年10月26日 (日)

    今回はバーツだけではなく配線材も全部ベルデンに交換します。

    Aria Pro II LC-600D

    キャビティ内のポット間は定番のBelden#8503、PU〜ポット〜トグルスイッチ〜アウトプットジャックは、EG1000の配線で実績のあるBelden#8216という単芯シールドを使用します。

    まずはスイッチクラフト製のトグルスイッチに3本のシールドを結線するところから始めて、それらのシールドをコントロールキャビテ ィまで引き回した後、スイッチプレートと共にスイッチをボディに取り付けました。

    次に、ミリ規格のCTS製のポットの1番端子を折り曲げてボリューム本体と短絡させて半田付けし、コントロールキャビティのトップ面にアルミテープを貼ってからポットを仮止めし、そこにトグルスイッチから伸びてきたシールド線のフロントとリアを間違えないように注意しつつ、ボリュームポットの背中に網線を、2番端子に単芯線を、 それぞれ半田付けしました。

    キャパシタは、ある方から薦められたヴィンテージのブラックビューティーを試してみたかったのですが、コンデンサー1個に数千円も払う勇気がなかなか出なくて、取りあえず純正の正体不明なキャパシタを付けました。

    ここでコントロールノブのメモリとポットポインターの位置を上手く合わせてポットを固定しました。

    DiMarzio PAF 分解

    PUから出ている線もベルデンに交換するために2つのコイルをベースプレートから外して、コールドの出力線とシールドの網線をベースプレートに半田付けし、ホットの出力線と単芯線を短絡して伸縮チューブを被せてからコイルをベースプレートに戻した後、周囲にアセテートテープを巻いたら完成です。

    その昔、理科の授業で「マグネットは熱を加えると磁力が下がる」と習った記憶があったので、ベースプレートに半田付けする際には必ずコイルとマグネットを外していたのですが、どうやら半田付けの熱程度ならば神経質に気にしなくても大丈夫なようです。

    まぁ、外した方が作業しやすいので、今後も外すと思いますけど。

    エスカッションやピックガードは2回目で注文するので、作業は一旦ここで中断です。 あ、GOTOH製のペグは手元あるので取り付けておきます。

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  • 2020年11月4日 (水)

    Aria Pro II LC-600D

    サウンドハウスへの1回目の注文から14日が経ったので、2回目の注文を行って、翌日に残りのパーツが届いたので組み込みを再開します。

    ハムバッカーで何が困るかって、ギターによってエスカッション(マウントリング)のネジ位置が微妙にズレる事です。

    家に転がってたアイボリーのエスカッションの左右のネジ穴の幅は約83〜84mmなのに対し、このギターは約81.5〜82mmと狭いため、ネジ位置が合う物を探してSCUDの商品を新たに購入したのですが、やはりSCUDは期待を裏切るのが得意な低品質で、フロントはどうにかネジ位置が合ったのですが、リア用は微妙に幅が狭くて81mmしかなく、無加工ではネジが思いっ切り斜めになってしまいます。

    仕方がないので爪楊枝で3ヶ所のネジ穴を埋めてから現物合わせで穴を開け直しました。

    また、同じくSCUDのピックガードですが、エスカッションが入り込む部分の凹みの深さが足りずに、そのままでは上端部分がネックにピッタリと付かなかったため、フロントの凹み部分を2mmほどカットしました。

    Aria Pro II LC-600D

    近くでよーく見ると、エスカッションとピックガードの間に結構な隙間があるのですが、パッと見は分からないので気にしない事にします。

    という具合で何だかんだと一筋縄では行きませんでしたが、PUを取り付けて配線も行って音出し確認をして、どうにか完成しました。

    ちなみに、ボディバックのプレートはブラックをそのまま使ってます。

    余談ですが、私が最初にエレギが欲しいと思った中学生の時には、チェリーサンバーストのレスポールにブラックパーツの組み合わせは「マジ絶対あり得ねー」と思ってました。

    それがいつの間にか逆にカッコいいというか「渋くて大好きー」に変わっていたのは自分でも不思議なのですが、多少なりとも大人になった証拠なのでしょうかね。

    Aria Pro II LC-600D

    なのでその組み合わせを残したいがための、どうせ普通に弾いてたら見えないしの、バックのみブラックパーツという訳です。

    肝心の音ですが、マホガニーの暴れてバラける音をメイプルが押さえ付けてまとめて、ほんの少しだけデッドで極々微妙に鼻が詰まった感じでありながら、ハイミッドが前面に出る素早いアタックの高密度な音は流石レスポールといったところで、弾いててワクワクします

    定価が安いミドルクラスのモデルなので、良くない材が使われていたら音も残念になるのですが、決して上級な材ではないにしろ、この音が出るなら十分に満足です。

    サーキットをスイッチクラフトやCTSやベルデンに、ブリッジとテールピースもスタッドやアンカーから全交換したのも大きく影響していると思いますが、同年代の同じカスタムタイプなら、私の好きな富士弦のグレコEG600辺りよりも断然いいと思います。

    このマイナーな国産ギターが今でもヤフオクなどで意外な高額で取引されているのも分かる気がします。

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  • 2021年4月30日 (金)

    エース・フレーリーモデル

    いよいよ念願のエース・フレーリーモデルに改造します。

    まずはPUやピックガードなど、作業の邪魔になる最低限のパーツを外し、トグルスイッチに繋がる配線はフロントPUのザグり内に丸めておきます。

    次にセンターPUのザグリを行う部分に塗装が割れないように養生するためのマスキングテープを貼り、そこにザグる位置を書き込みます。

    今回ベニヤ板から新たに作ったハムバッカーのテンプレートを両面テープでボディに固定して、電動トリマーで約20mmの深さまでザグります。

    エース・フレーリーモデル

    いくらマスキングテープで養生しているとはいえ、超強力で高回転な電動トリマーでザグると塗装割れの懸念は拭えないのですが、今回は大丈夫でした。

    一般的な3PUのレスポールは、センターポジションでセンターリアのフェズアウトとなり、それはそれで他では出せない音なので貴重ではあるのですが、それゆえに使用するシーンが限られてしまうため、今回はセンターPUは配線せずに完全な見た目だけのダミーとなります。

    エース・フレーリーモデル

    が、色合いを揃えるために80年製のディマジオのPAFを使用するので、ちょっと勿体無い気もします。

    ちなみに、センターのエスカッションはフロントのそれと平面になるように底面を削って高さを調整したリア用を使います。

    そしてピックガードの加工ですが、現物合わせでセンターPUのエスカッションの部分だけをカットして、エース本人のモデルと同じようにPU間を残してあります。

    市販されているエースモデルでも、このような仕様のピックガードになっている物は見た事がありません。

    最後にすべてのパーツを取り付けて配線し直し、弦を張ったら完成です。

    とは言っても、本物のエースモデルはハードウエアがクロームで、やはりカスタムはゴールドパーツじゃないと嫌な私は、そこだけはどうしても譲れないため、果たしてこれをエースモデルと呼んでいいのかと少しだけ葛藤が残ります。

    もうひとつ、本物はペグボタンがパーロイドなのですが、ぶっちゃけそれも嫌いなので普通にゴールドにしました。

    果たして略。

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