埼玉交通情報トップページ > 自然スポット目次 > 雁坂峠の原生林

●秩父市 雁坂峠の原生林●


雁坂峠は、標高2000mあまりの奥秩父の主稜線をまたぎ、
古くから武蔵の国と甲斐の国とを結んできました。
そして、98年の4月には、この峠の下を国道トンネルが通るようになりました。

今では、この峠は豊かな自然を抱くハイキングコースとして親しまれています。

登山口である川又は標高約600m、峠の最高地点は標高2080mと大きな
高度差をもつため、杉やひのきの植林帯、栗などの雑木林、ブナやミズナラの
原生林、カラマツの植林、コメツガ・シラビソの原生林、ダケカンバの再生林
と、さまざまな植生を観察することができます。
(写真:矢岳沢から晩秋の雁坂嶺)


川又の集落を抜け、しばらくは植林の道をたどります。
そして、雑木林を抜けると、しだいにブナの木が現れるようになります。

そして標高1300m付近には、美しいブナの林が展開します。

ブナの木の特徴は、そのなめらかな銀色の肌。
その肌にこけが描き出す模様は、あじがあります。

ブナの木は派手さこそありませんが、どの季節に眺めても素朴な美しさがあります。

わたしが好きなのは、秋の黄葉のころの風景。体のしんまで 黄金色に染められてしまいます。


足元には、ブナの木の実がたくさん落ちていました。
ブナは、数年に一度、どっとたくさん実をつけます。 去年の秋は、その当たり年でした。
何年か辛抱して、一気に動物たちが食べきれないくらい実をちらばして、子孫を残すのです。

ちなみにこのブナの実、人間でも食べることができます。 生でも食べられますし、炒ればおいしいです。
でも、ブナの実は未来の森の貴重な資産。ほんのちょびっとだけいただきましょう。


ブナの林を抜けると、急な坂になります。
あえぎながら高度を稼いでいくと、やがてコメツガという針葉樹が現れます。
コメツガは亜寒帯に生える木。奥秩父では、標高1600m以上で見られます。
このあたりのコメツガ林はササに覆われていますが、
もう少し標高が上がると林の下側がコケのじゅうたんを敷き詰められたようになります。





貫禄がある、コメツガのうす暗い林のそばに、明るく開けた若い木々が育っていました。
このダケカンバの木は、明るい場所を好みます。
かつて、このあたりもコメツガの薄暗い林でした。
しかし約30年前に日本列島を襲った伊勢湾台風によって、老木が倒れ、
開けた場所にダケカンバの木が育ち始めました。
やがて遠い将来、自然の力によて再びコメツガの林によみがえるのです。


標高2000mを超えると、道もなだらかになります。
1m近く積もった、3月のくさった雪にはばまれて、
私は地蔵岩展望台で引き返しました。

地蔵岩のそばのしゃくなげの木が、寒さでちじこまっていました。

冷たい風が吹きぬける地蔵岩からは、甲武信岳の3つの頂がまじかに見えました。


●交通案内●
秩父鉄道三峰口駅発バス時刻

雁坂峠の埼玉県側の入口である川又へは、秩父鉄道三峰口駅から西武観光バス「秩父湖」行きで終点まで行き、
そこからさらに秩父鉄道バスに乗り継いでいきます。 駅から接続時間込みで約1時間ほどです。
車でいくのに比べてバスで行くと、とても川又は遠く感じます。
しかし、秩父鉄道のマイクロバスにゆられると、手前に和名倉山(標高2013m)のどっしりとした姿を背にして
急な斜面にへばりついている栃本集落の風景を楽しむことができます。

無雪期(5月〜11月)なら気合いれれば日帰りも可能ですが、
(私の場合、6月に川又から雁坂峠まで登り4時間、下り3時間)
せっかく峠にきたなら、峠の頂近くにある雁坂小屋に宿泊するとよいでしょう。
峠の頂は南側が大きく開け、雄大な展望を楽しむことができます。



・かもしかの足跡・

運がよければ、さまざまな動物に出会えます。
(私はかもしかを目撃しました)

このページは
1999年3月3日に取材しました。