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●ノンステップバスってバリアフリー?● 2002.5.9

最近、ノンステップバス(段差のないバス)が急速にその数を増やしています。
福祉目的の循環バスやコミュニティバスはもとより、一般路線でも着実に普及が進んでいます。
国が進めるバリアフリー施策に基づき、バス車両の導入などにかかる費用が
補助させる制度があることも普及が進んでいる一因です。
最近では、ノンステップバスの標準仕様を定める動きもあります。
 →国土交通省自動車交通局ページ
ただ、私は今のノンステップバスについては、次のような問題点があると思います。

1)ほんとうに車いすの方に使ってもらっている?
2)一般の乗客に迷惑をかけていない?
3)費用に見合った効果が出ている?

1)ほんとうに車いすの方に使ってもらっている?
実は、私は月に30回以上バスに乗りますが、
車いすの方がバスを使っている光景はほとんど見たことがありません。
この原因として、次のことが考えられます。
・ノンステップバスのようなバスがあることが知られてない。
・ハード的な問題点の前に、ソフト的な「見えないバリア」がある。
 (車いすの方がためらっているのか、運転手の「無言の圧力」があるのか)
・車いすの人が乗りたい時間帯や行きたい場所とのミスマッチ

「知られていない」ことに対しては、広報など情報提供を行う方法があります。
(このサイトでも遅ればせながらノンステップバスの運用を公開し始めました)
ただ、連続的な情報提供が行われていないことが問題です。
(例えば車いす利用可能なバス停から、病院まで段差なしで行けるルートがわからない)
本当は、病院などの玄関にそのまま乗り入れるのがベストなのですが...

「見えないバリア」の解決については、一般の乗客、運転手、車いすの方が
実際に体験してみる、あるいは乗るところを見てもらうのが一番だと思います。
例えば、日中のあまり込まない時間帯に
「車いすの皆さまバスの旅プレゼント」みたいな企画?をやってみるのもいいかもしれません。
また、運転手の方に研修などで車いす乗車を体験するのも大切だと思います(やってたらスミマセン)
でも、別にノンステップバスでなくても、
ほかの乗客がちょっと持ち上げるのを手伝うだけで十分なのかもしれません。

乗りたい時間や行きたい場所のミスマッチについては、
第一にノンステップバスの台数の少なさが起因しています。
県内のノンステップ導入路線(例:浦和駅→市立病院線)については、
ただでさえ本数が少ないのに、ノンステップバスは1日何本か、といったレベルです。
車両の運用上の問題もあるのでしょうが、
重要な施設がある路線に戦略的に車両を投入するなどの工夫が必要だと思います。

2)一般の乗客に迷惑をかけていない?
大部分のノンステップバスは、車いすを跳ね上げ式の座席にセットする構造になっています。
これまで座っていた人に立ってもらうだけでなく、固定用のベルトを締めたり、
バス車体の説明書を見ると手順の多さにため息?が出そうになります。

そればかりでなく、ノンステップバスの座席数は一般のバスより少なく、
一般の乗客からノンステップバスが「目の敵?」にされていること、
車輪のスペースを確保するために座席が床から異様に高くなり、
座席に座ること自体「バリア」になっているのが現状です。
一般的にノンステップバスにすると乗客の乗降時間が短縮され、
定時性向上の効果があると言われていますが、
一般の乗客が「いやだな」と思わない工夫が必要だと思います。
(例えば、車いす専用の出入り口(車いす固定金具付き)を設ける、
 ラッシュ時の車いす乗降に制限を設ける?とか)

3)費用に見合った効果が出ている?
ノンステップバスの導入費用は1台あたり2000万円以上といわれています。
(普通のバスの3割増しくらい)
いくら国や県などから補助が出るとはいっても、
車いすの方から特別運賃をもらうわけでないので、
バス会社としては採算に合わないのが現状ではないでしょうか。
(参考)埼玉県「超低床ノンステップバス等導入促進費補助金」では
    国,県,市町村の補助金額はバス購入金額の半額まで補助)
費用対効果、といった観点では、
車いすの方の利用者数が一定基準を下回った路線のノンステップバスを他の路線に振り返る、
あるいは他の輸送手段(ライトバンなどを用いた「移送サービス」や「介護タクシー」など)
との役割分担について考え直す必要があるのかもしれません。

いろいろ書いてきましたが、
本当に「バリアフリー」なバスを目指すためには、
単に車両を改善するのみならず、それにかかわる施設やソフト面、
さらにはまちづくり全体について、考え直す必要があると思います。
(特に埼玉は歩道が狭い道が多く、また公共施設が分散して配置されているので。。。)

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