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●2002年さいたまのバスはどうなる?● 2002.1.2

2002年、これまでバス事業者を縛ってきた
バスに関連する規制が撤廃され、埼玉のバスは大きく変貌することが予想されます。
私は、2002年には次のような変化がおきると考えています。

1)採算路線(地域)のバス路線強化と不採算路線淘汰の2極化
 これまで、路線が不採算であっても、規制があったため路線がなかなか廃止されませんでした。
 規制が撤廃されると、バス事業者は自由に路線を廃止、新設することができます。
 このため、越谷市などのように、人口密度が高い(=バス市場として魅力的)地域への
 バス事業者の進出の動きがさらに進む一方で、
 人口密度が低い地域での路線廃止や便数削減がさらに進むことが予測されます。

 とくに、バス便数が1時間に1本以下の路線では、
 バス便数による利便性の低下が顕著であるため、
 路線廃止が急速に進むと考えられます。
 (たとえば、白岡〜岩槻間、加須〜大越馬場間などのバスは路線存続の危機にあります)

 補助拡大や利用者サービス向上など、悪循環に陥らないような
 積極的な施策が特に必要な地域といえます。

2)分社化による運行コスト削減
 「分社化」とは、例えば「東武鉄道」が路線の一部を
 「朝日バス」「川越観光バス」のように子会社に分割することです。
 運転士をいったん解雇し、低賃金で再雇用する
 (または、賃金水準の低い若い人を雇う)
 という手法で、運行コストを削減するものです。
 これにより、いままで不採算となっていた路線でも採算がとれるようになる場合があります。
 
 2002年4月には、埼玉の一大バス事業者であった東武バスが全面的に分社化されます。
 さらに、菖蒲や森林公園など、子会社への路線譲渡もさらに進みます。
 これまでの例では、地域密着型のダイヤになる場合が多いようです。
 (場合によっては、試験的に増便になるケースもあるようです)
 
 路線の維持という点では私は分社化の動きはやむを得ないものと考えていますが、
 定期券保有者に自社路線内で格安に乗車できる「環境定期」の適用範囲の縮小、
 地元の地理に詳しいベテランドライバーの不足、
 バス会社間の連携の問題が懸念されます。
 環境定期については、グループ会社間で柔軟な運用をしていただきたいものです。

3)自治体補助の拡大
 現在でも、県の秩父地域における補助や、
 沿線自治体(例:川里町)による補助により、路線の維持や強化が行われています。
 今後、規制緩和により路線維持が困難な箇所については、
 補助が行われるケースが今後増えてくるものと考えられます。
 ただし、沿線自治体の熱意の差により、補助に「ムラ」が出てくることが考えられます。
 また、補助を行わずに、自治体が独自に代替バス、
 あるいはそれに代わる機能の循環バスを運行するケースが増えてくるものと考えられます。
 
 ただ、補助を行う際にも、やみくもに行うのではなく、
 利用者アンケートによる本当に必要な路線、補助すべき路線の見極め、
 便数改善の社会実験の実施、入札などにおけるバス事業者間での競争原理の導入など、
 限られた財源の中での補助のありかたを今後検討する必要があると思います。

4)便利なバスが生まれる?
 路線やダイヤの設定が自由になるということは、利用者のニーズにあわせ、
 便利なバスが生まれる可能性があるということです。
 そこで私は、埼玉県の実情を照らし合わせ、次のようなバスの改善案を提案します。

 (1)深夜バス、早朝バスの運行
  埼玉は、なぜか終電が早いです(特に、国道16号の外側の地域)。
  終電が早い地域は、終バスも早いです。
  最近はやりの深夜バスも、大宮・川越止まりです。
  大変不便な思いをしている、遠距離通勤・通学者も多いのではないでしょうか。
  そこで、比較的電車が深夜まで運行されている、大宮、川越などのターミナルから、
  さらに郊外(大規模団地など)への深夜バスを運行する、というのはいかがでしょうか。
  少々割高な運賃設定にしても、需要は必ずあると思います。
  たとえば、大宮駅〜(17号)〜鴻巣、大宮駅〜(大宮栗橋線)〜東鷲宮、
  川越〜高坂NTなどが、有望な路線として考えられます。
  需要が少ないのなら、金曜夜限定というのもありでしょう。
  夜間利用されない観光バス車両の有効活用にもなると思います。
  また、深夜バスの回送便を活用して、
  京浜東北の始発にまにあう早朝バス、なんていうのもあると利用する人がいるかもしれません。

 (2)高速バスで快適通勤
  2001年に誕生した松伏〜東京間の高速バス。好調だそうです。
  2001年に開業した埼玉高速鉄道浦和美園駅。浦和ICに近いのですが、
  サッカー試合日以外は閑散としています。
  そこで、久喜や岩槻から高速を使って浦和美園まで高速バスで行き、
  そこから都心まで座って通勤、なんていうバスがあれば、
  朝の通勤地獄から解放されていい、と思います。
  また、鶴ヶ島ICに近い東武東上線の坂戸駅から都心への高速バスなんていうのも
  あるといいかもしれません。
   
 (3)デマンド型バスの運行
  2002年1月中旬、国・県が上尾市で、
  デマンドバス運行実験を行う予定だそうです。→県のページ
  デマンドバスとは、利用者のリクエストに応じて
  バス運行ルートなどを変更するバスのことで、
  高知県中村市で導入されて以来全国各地に広がっています。
  ただし、デマンドバス導入には、車両側、運行センター側両方に
  多額の整備費用がかかります。
  今後、インターネット掲示板利用など、
  安価に導入可能なデマンドバスシステムの開発が期待したいものです。
  (ただし高齢者でも使えるように、電話などのインターフェイスも必要)
  埼玉でも、都市のバス不便地域のみならず、
  バスの運行本数が少ない、県北地域や比企地域で導入すると
  特に効果が高いと思います。

 (4)混雑回避ルートバスの運行
  川越駅から桶川駅まで行く東武バス。
  このバス路線は、よく川越市内や桶川市内で激しい渋滞に巻き込まれます。
  そこで、渋滞が起きたときには、
  平行する道路に切り替えて走ってくれるバスがあるといいと思います。
  (たとえば、先の例では桶川市泉2バス停付近で渋滞がよく発生するので、
   市民体育館の南側の道路に経路を切り替える)
  ただし、途中のバス停で待っている人のために、
  運行経路を変更したことを伝えるチャイムを設置するか、
  バス停を混雑する区間に設置しない、などの方策が必要となります。

 (5)簡易型バスロケの導入
  埼玉でも、バスロケ(=バスロケーションシステム、バスの現在地を知らせる機械)
  が徐々に導入されてきています。
  最近では、到着予想時間や携帯電話などへの提供(国際興業バスが導入予定)
  などを行う動きもあります。
  ただし、既存のバスロケは、施設の整備費用が高く、
  都市部のごく一部の路線のみに導入されるにとどまっています。
  ただ、道路混雑による遅延が日常的に発生し、
  かつ本数がそれほど多くない路線(上尾〜鴻巣間など)で、
  本当の導入効果が高いと考えられます。
  そのため、運行本数があまり多くない地域を対象に、
  あまり導入に費用がかからない、簡易型バスロケがあればいいと思います。
  たとえば、バス運転士が主要ポイントごとに到着するたびに、
  携帯電話の伝言サービスに現在位置と所要時間、混雑状況をメッセージとして残します。
  利用者は伝言サービスの電話番号に電話すれば、
  バスの位置を知ることができる、というわけです。
  また、バスの車内放送やバスの運転台にとりつけられたWEBカメラを、
  インターネットや携帯電話回線経由で、
  バス停で見たり放送したりするなんてこともやってみると面白いかもしれません。

 (6)ショッピングセンターバス、温泉バスの運行
  2001年、川口に大型ショッピングセンター「ダイヤモンドシティキャラ」がオープンし、
  蕨駅からのショッピングバスが運行されるようになりました。
  最近では、郊外に大型のショッピングセンターや大型映画館などがオープンすることが多く、
  また、温泉施設などを備えた健康ランドなども続々オープンしています。
  ただ、これらの施設は、バイパスぞいなどにあって、駅や市の中心部から離れており、
  公共交通機関でのアクセスはあまりよくないケースが多いのが現状です。
  そこで、既存バス路線(市町村運行の循環バスなども含む)を少しコース変更して、
  これらの施設に立ち寄るようにするといいと思います。
  また、バス停名も、大型施設の名前にあわせるなどいいと思います。
  たとえば、北本駅から富士重工行きの川越観光バスの場合、
  少し経路変更すれば、北本天然温泉やリリブ北本(スーパー)などにアクセスできます。

 (7)存在感のあるバス路線
  鉄道は、レールがあるので、鉄道が通っていることが一目瞭然です。
  バス路線も、道路舗装を工夫するなどして、
  一目でわかるようにすれば、初めて街を訪れた人にもバス路線が利用しやすくなると思います。
  
5)バリアフリーへの対応
 2001年は、県内各地にノンステップ型バスやワンステップ型バスが導入される、
 バスのバリアフリー元年とも言うべき年でした。
 2002年も、分社化などに伴う車両入れ替えなどにより、
 バス車両のバリアフリー化はさらに進むものと考えられます。
 これは、バリアフリー型バス車両に対する補助制度があるためです。
 ただし、車両以外の面では、バリアフリーとはまだまだ言えないのが現状です。
 
 バスカードはお年よりには差しこみにくいし、ベンチがないバス停も多いし、
 時刻表も小さくて見づらいし・・・
 また交通量が多いのに歩道すらないバス停もたくさんあります。
 
 バス停の位置も、病院やショッピングセンターの目の前にしてくれたらどんなに助かることか。
 
 車イス対応型のバス車両でも、
 実際に車イスの方が乗っていることを見ることはほとんどありません。
 おそらく迷惑がられるのでは?と気がねされているのではないでしょうか。
 ハード的整備が大変であるならば、
 ノンステップ型車両の運行時刻表を配布するなど、
 できることはたくさんあると思います。
 高齢者や障害者の目線に立って、
 だれでも気がねなく乗れる、バスにしていただきたいものです。

    〜おしまい〜


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