●概要● 関東地方では元旦、1月2日に続いて3日も各地で降雪が観測され、内陸で積雪となった。正月の三ヶ日 の3日間全て降雪が観測されることは観測史上初めてのことであったということだ。 1月3日の降雪は二つ玉低気圧によるものである。降り出しは関東地方のほぼ全域で雪だったが、 日本海を進む低気圧に向かって上空に暖気が入った為に次第に雨に変わったところが多かった。 しかし、今回の場合、上空が暖まっても地上の気温が非常に低かった為に、広い範囲で着氷災害 が発生した。4日朝には着氷によって高崎線や東北線は不通となり、路面凍結による事故が相次いだ。 ●凍雨・着氷について● 概要で触れたとおり、関東地方では降り出しが雪だったところも次第に雨や凍雨に変わった。 ところが、東京都の多摩地方・埼玉県・群馬県・栃木県などは、雪が雨に変わった時点で 地上の気温はまだ氷点下であった。 氷点下で雨が降ると言うのは非常に珍しい現象であるが、上空に0℃以上の暖気層があれば 有り得る話しなのである。 上空が暖かく、地上が氷点下であった場合には次の2つの降水現象が考えられる。 1,凍雨 地上付近の氷点下の層が比較的厚い場合、上空で一度雪が溶けて雨になったものが、地上に 到達する前に再び凍結して降るものである。凍雨は透明球状の直径2〜3mmの粒であることが 多く、霰(あられ)に大別される。 凍雨は雨氷に比べて着氷の恐れは小さく、雪が雨に変わる際にはしばしば見られる。 2,雨氷 地上付近の氷点下の層が薄い場合、上空で溶けた雪は再び凍結することなく地上まで落ちてくる。 この場合、地上の気温は氷点下なので降ってきた雨は地上で凍結してしまう。これが非常に やっかいな現象で「着氷」と呼ばれている。 特に、鉄道の架線などに着氷が起こるとパンタグラフに電気が送られなくなり鉄道は運転できなくなる。 そして、着氷による氷の密度は非常に高いので、ちょっとやそっとでは氷を溶かすことができないので、 一度鉄道などがストップすると長時間に渡って運行に支障を及ぼす可能性が高いのである。 雨氷は凍雨に比べてもさらに珍しく、数年に一度程度しか見られない。 ![]() 今回は雪が雨に変わる過程で、これらの凍雨や雨氷が各地で観測された。 ●天気図● 冒頭に示した天気図のように、南岸を進む低気圧とは別に、日本海に明瞭な低気圧(副低気圧でない)がある場合、 暖気が大きく北上し普通なら関東の降水は雨となる。しかし、今回に関しては低層が非常に冷え込む という状態が起こった為、この気圧配置としては珍しく関東地方で雪が降った。 しかし、下層が冷えているからといっていつまでも雪が降り続く訳ではない。 やがて日本海にある低気圧に向かって上層に著しく暖気が侵入した。 下層は地形の影響もありなかなか暖まらないので、前線性の逆転層が発生する形になった。 こうなると、上層の暖気によって雪は溶けてしまい、いくら地上が冷えていても雪にはならないのである。 ●各地の積雪● 下の表は各地の積雪の様子である。黄色く示したものは気象庁による正式記録、白く示したものは 個人観測による記録です。個人観測は2ちゃんねる天文・気象板での報告を参考にさせて頂きました。
※「−」は降雪なし。「0」は降雪あったが積雪無し。「0.5」は積雪があったが1cm未満。 **積雪分布図** ![]() ●自宅観測の記録● 今回も1月2日と同じく、大雪と言えるほどのものではないので、詳細な観測は行っていない。 しかし、今回の降水は積雪そのものよりも凍雨や雨氷による着氷現象が見られたことの方がはるかに貴重であった。 熊谷では昼前後に小雪が舞い、夕方頃から本格的に降雪した。今回は気温が氷点下1℃前後の条件下で降雪したので 路面なども瞬く間に雪に覆われ、熊谷地方気象台で2cm、自宅で1cmの積雪を観測した。 夜の8時頃から氷の粒がベランダを叩くバチバチという音が激しくなり始めた。地上はまだ氷点下だったが、上空に暖気が入った 為に降った雨が再凍結して降る凍雨に変わったのである。凍雨は夜の11時頃まで激しく降り、11時頃からは雨に変わった。 雨に変わったとは言っても、気温はまだ氷点下である。この氷点下の雨は翌日の未明まで降り続けた。 翌朝、外の様子を観察してみると路面は見事な凍結を起こし、電線にはつららが垂れ下がっていた。 車のフロントガラスは凍りついた雨にコーティングされ、樹木も表面が氷に覆われキラキラと光り輝いている・・・。 このように幻想的な光景ではあったが、この辺りでは稀に見る着氷災害となってしまったのも事実である。 ●記録写真●
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